大牟田市長岡内科医院(高血圧、糖尿病、生活習慣病) 西鉄大牟田線倉永駅前徒歩1分
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炎症性疾患

 

クローン病は若年者にみられ、消化管に縦列傾向のあるびらんや、不整型の深い潰瘍を形成し、腹痛、慢性下痢などの症状を起こす慢性の炎症性の疾患です。口から肛門までの消化管のあらゆる部位に病変が出来る可能性があります。
そのなかでも、小腸や大腸(特に回盲部:小腸と大腸がつながる部位)が好発部位です。
根本的な原因は未だわかっておらず、自己免疫疾患(自分の免疫システムが、正常な組織に対してまで過剰に反応し攻撃をする疾患)と考えられているが、サイトカイン(免疫システムの細胞から放出されるタンパク質で、他の細胞に情報伝達をする物質)が疾患形成に重要な働きをしていると考えられています。
その中でも特に炎症を促進するサイトカインであるTNFαやIL-6が注目されている。
何故これらのサイトカインが注目されているのかというと、以前は炎症性腸疾患のクローン病の治療は栄養療法が中心的であり、そのことが患者のQOLを落としたり、病状がコントロールできず、手術を繰り返し腸が短くなってしまうことがありました。
しかしサイトカインを阻害する抗TNFα抗体(レミケード、ヒュミラ)の登場によりクローン病の治療は劇的に変化し、食事療法も緩和することができ、QOL改善につながっているからです。
関節リウマチでも著明な効果を認め治療方針が変わってきている。
またレミケードは潰瘍性大腸炎の治療としても保険適応となりました。
一方、IL-6はTNFα同様の炎症性サイトカインで、1986年に大阪大学の岸本らによって発見されました。
その機能は、T-cell B-cellの活性化、急性期蛋白(CRP)の誘導など様々な作用をもっています。
臨床の現場でも、炎症があればCRPが高くなりますのでそのような状態の時はIL-6の濃度が高いということがいえます。
IBDの患者における炎症性サイトカインIL-6の濃度を血清、腸管粘膜測定する研究が報告されていますが、活動期潰瘍性大腸炎、活動期クローン病の血清、特に腸管粘膜でIL-6が増加しており、病状との関連性が示唆されていました。
IL-6ノックアウトマウス(IL-6が発現しないマウス)は腸炎が起こりにくくなり、また自然発症腸炎モデルマウス(SAMP1)や様々な腸炎モデルにおいても、IL-6の過剰なシグナルを抑制する物質(gp130-Fc融合蛋白)を投与するとマウスの腸炎が著明に抑制されることも判明した。
そしてIL6/STAT3の経路が炎症、発癌に関与することも証明されている。
IL-6のシグナルを抑制することは炎症性疾患の治療に役立つのではないかと臨床的な検討がされ、IL-6レセプター中和抗体の有効性がクローン病で検討された。この抗体はIL-6レセプターの経路を遮断するものであり、投与によりCRPが陰性化し有効率80%患者の自覚症状は著明に改善、抗TNFα抗体で問題となっている自己抗体も全く出現しないとのことです。
しかし腸管上皮増殖も抑制してしまうためか、潰瘍の治癒で有意な改善は認めませんでした。

抗IL-6レセプター抗体は2005年にリンパ増殖性疾患のキャッスルマン病の治療薬として承認。
炎症性腸疾患より先に同じ炎症性疾患である関節リウマチで高い寛解維持効果が認められ、2008年4月16日、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体のトシリズマブ(商品名:アクテムラ)が承認された。
TNFα阻害薬とIL6阻害薬どちらが効果があるのか気になるところであった。
2012年6月にADACTA Trialの成果で、スイスUniv Hospitals of GenevaのC. Gabay氏らが6月9日までベルリンで開催されていた欧州リウマチ学会(EULAR2012)で、インターロイキン-6(IL-6)受容体抗体トシリズマブ(アクテムラ)単独療法は抗TNFα抗体:アダリムマブ(ヒュミラ)単独療法よりも、関節リウマチ(RA)患者の疾患活動性を低下させることに優れていることを報告した。
このことにより関節リウマチでは今後IL-6受容体抗体の使用が加速されるであろう。
マウスモデルでIL-6の過剰なシグナルをのみを抑制し、腸炎を著明に抑制したgp130-Fc融合蛋白が、ドイツにて2008年より炎症性疾患に対しプレクリニカルに試験が開始されている。
関節リウマチの新薬としてもより副作用の少ない第二世代のIL6抗体となりうる可能性も十分あり、臨床試験の結果が期待されている。

参考文献

 

Asuka Suzuki, Toshikatsu Hanada, Keiichi Mitsuyama,et al. Cis3/Socs3/Ssi3 Plays a Negative Regulatory Role in Stat3 Activation and Intestinal Inflammation
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K Mitsuyama,* N Tomiyasu,* A Suzuki,et al. A form of circulating interleukin-6 receptor component soluble gp130 as a potential interleukin-6 inhibitor in inflammatory bowel disease
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Mitsuyama K, Toyonaga A, Sasaki E, et al. Soluble interleukin-6 receptors in inflammatory bowel disease; relation to circulating interleukin-6. Gut. 1994;36:45–9. 
 
Mitsuyama K, Sata M, Tanikawa K. Significance of interleukin-6 in patients with inflammatory bowel disease. Gastroenterol Jpn. 1991;26:20–8. 
 
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